今から10年前、我が家に女の子の赤ちゃんが産まれました。
娘は1153グラムで産まれた極低出生体重児でした。
妻の妊娠が4ヶ月にさしかかった頃、胎盤早期剥離が発覚。そこから絶対安静の長い入院生活が始まりました。
お腹の子の状態は極めて危険とのこと。お腹の子のためには、1日でも長くママのお腹の中にいさせてあげること、医師からはそう告げられました。
本来の出産予定日は8月。暑い夏の日はまだ当分先。夏に向かって、1日でも長くお腹の中にいて欲しい、一歩一歩、少しずつでもいいから着実に育って欲しい、そう願いを込めてお腹の子に「夏歩(かほ)」と名付けて呼びかけました。
入院してから3ヶ月後、妊娠28週と2日で夏歩は産まれました。胎盤はもうボロボロで限界だったと言われました。
そんな夏歩は生後間もなく生死を彷徨い、予断を許さない状況が続きました。今日は生きててくれた、今日もなんとか生きててくれた、そんな1日1日を繰り返し、産まれてから3ヶ月間をNICUで過ごすことになりました。とにかく生き続けて欲しい、そう祈り続ける毎日でした。
それが10年前の出来事。随分昔のように感じます。
あれから10年。おかげさまで夏歩は10歳になりました。
毎日小学校へ行き、大好きな友だちと遊び、ステキなママたち、パパたちに支えられ、楽しく毎日を過ごしています。
コロナがあり、15年勤めた会社の退職があり、人生観を見つめ直す機会が増えた日々。夏歩の誕生がキッカケでその後の人生観が大きく変わったことは間違いありません。
今でこそ健康なのが当たり前のように思ってしまいがちだけれども、この子の成長をいつまで見届けられるのだろうか、今もその思いは変わりません。我が子が健康であり、自分や家族が健康であり、友人みんなが健康であり、それがどれだけ幸せなことか、そんな幸せが続いてはじめて見届けられる子どもたちの成長。
晴れた夏空を眺め、夏歩の誕生を思い返し、そう改めて実感するのでした。